
——大塚工務店と大塚さんのこれまでについて教えてください。
大塚工務店は兵庫県明石市で大正十三年(1924年)に創業しました。大工だった曽祖父の為三郎が棟梁として興してから四代、一世紀を過ぎました。
私は男四人兄弟の次男なんですが、子どもの頃から家業は兄が継ぐものと思っていたんです。
大学の建築学科を出て設計事務所で働いていた頃、兄と私に「お父さんの力になってあげて欲しい」と母からはじめての頼まれごとを経験しました。
その頃、兄も別の設計事務所に勤務していて、学校建築の担当をしていました。教師を志したこともある兄は、学び舎をつくることにやり甲斐を感じているようでした。
それで、住宅を手掛けたい気持ちが強かった私が、戻ることになったんです。
ちなみに兄は、その後独立。保育園を専門とする建築家としての道を歩んでいます。
私が家業に戻った2004年は、阪神・淡路大震災の復興がひと段落して、住宅リフォームという仕事が市民権を得た頃でした。
大塚工務店も、今でいうリノベーションと呼ばれるような改修や、OBさんの修繕は目まぐるしくも、木の家の新築という仕事は、目減りしていました。
当時の業界的な工務店の家づくり像は、ハウスメーカーの仕事を写したような建て方でしたし、公の仕事を入札しても、役人に通信簿を付けられることに違和感を拭えませんでした。そのどちらも、自分の一生の仕事にしたいとは思えなかったんですね。
腕のいい専属大工さんはいるけど、「大工の腕を活かせてないな」と思っていた時、祖父に家業の歴史を聞いたことがありました。

曽祖父時代の、女学校等の木造校舎の上棟写真を見せてもらったり、木造駅舎をつくった時の話などを通じて、職人を率いることの責任と覚悟を学びました。
祖母からは、女将さんの立場から見た、大工衆を率いて炊き出しをした話、ボーナスは城崎温泉への切符だった話などから、大工さんは大切にしないといけないという、良き成果を送り出す心構えを学びました。
綿々と受け継がれる物語を聞いて感動して、改めて「全うな木造建築を仕事にしたい」と決心したんです。
そこで当時、日本の無垢の木を現しで使った家つくりを実践するリーダーたる建築家の三澤康彦さんの教えを乞おうと、三澤さんが主宰する「MOKスクール」に参加しました。
スクールは正に、震災で風評被害も多かった木造建築を学び直す為の、全うな木造技術者を育む勉強会で、第一線で活躍する講師陣の話に耳を傾け、目を養い、手を動かしました。
これを機会に、三澤さん設計の木の家を、三軒施工する転機に恵まれて、理念から詳細まで、つくり方をじっくり吸収することができました。これが、今の設計施工の礎になっています。
スクールには、その後も通い続けて、今は理事を拝命して企画運営を担っています。
もくよう連には、仕事が成熟した後の2017年頃に、参画しました。
時を同じくして、もくよう連の事業でも協働した建築家の秋山東一先生から学ぶ機会を得ました。先生からは型を破る、崩していく、遊び心の大切さを学んだと思います。
こうして研鑽を重ねながら、近くの山の木でつくることを、あたりまえにする家つくりを重ねて来ました。
——どんな想いで家づくりをされていますか?
自分たちの家つくりをひとことで表すならば「風土と暮らす木の家」と言えるのではないでしょうか。
それは、気候風土・伝統・文化・慣習など、長い時間をかけて培われてきたものを大切にするということであり、地元の山の木を使って地元の職人が家をつくるということでもあります。
これは可能な限り地元で経済を回す「ローカルエコノミー」という考え方にもつながります。
日本には先人たちが後の人のために植えてくれた人工林がたくさんあるのに、ただ安いからという理由で海外から木材を輸入する期間が長く続いてきました。
でも「ローカルエコノミー」をきちんと回そうと考えると、地元の木を使って地元にお金を落とす。そして山をきちんと保全し、地域の環境に責任を持つという考え方になります。
つまり近くの山の木を使うことが地元の経済を回し、治山治水にもなる。それは洪水などの水害が起きにくい健全な自然環境を保つことにも繋がるんです。
こうした自分の中の本当の想いを会社の理念とすることが、嘘をつかない仕事に繋がると思っています。
だから「ローカルエコノミー」=「ローカルエコロジー」なんですよね。
ここでいう、ローカルエコノミーとは、地域経済や地産地消の循環、ローカルエコロジーとは、故郷の環境負荷の軽減、と定義しています。

もともと僕は「土着」とか「気候風土」という言葉が好きでした。
でも「ちょっと時代と逆行しているような印象があるかな」とか、「考え方の押し付けになってしまっているかな」と心配した時期もあったんです。
だけど「風土と暮らす木の家」という考え方を曲げずに実践してみて、こういう家つくりを求めている住まい手に、沢山めぐり逢うことができました。
こういう家が好きだし、こういう考え方のつくり手を応援したいと思ってくれるような皆さんです。
自分の家を建てて終わりじゃなくて、つくることを持続可能な事業として、続けていって欲しいと言われたこともあります。
そうしたことが分かってからは、自信を持ってやっていけるようになりました。

————大塚工務店の売りは何だと思いますか?
ひとつには「正規雇用した大工が手掛ける」ということですね。
お客さんとの顔が見える関係性を築いていくうえで、地元に住み暮らす専属大工が仕事を担うことは、安心感を持って受け入れていただけます。

それから素材は、基本的に国産木材100%、それもなるべく地元兵庫を中心に、隣県など近くの山の木を使います。
何より品質がいいということがあるし、「ローカルエコノミー」を盛り上げたいという意味でも、「ローカルエコロジー」に繋げたいという意味でも、地元の木を使う家つくりを大切にしています。
そして「真壁現し」で素材や骨組みそのものがデザインになっている美しい家であるということ。棟上げした時に「構造が綺麗だな」と思える家は、実際に構造がしっかりしています。
「真壁現し」であれば、完成してからもその美しさは目や心を和ませてくれるし、いつでも住まいの健康状況を目視できるので、入居後の長い暮らしの中で、メンテナンスも容易になります。

それから外構は、土地の風土に合った自生種、在来種の植物が楽しめる庭にすることを心がけています。雑木の庭とか、里山の風景を再現しましょうと提案しています。
「不動産」なんて呼ばれるけど、実際は庭って動くんですよね。木の葉が風にそよいだり、鳥や虫がやってきたり、常に動きがあります。
一日で見ても、太陽が動けば光や影も移り変わるし、年間を通してだと季節も移り変わる。
そんな風に常に変化している庭を家の中から、またそこに立って実際に手で触れながら観察する楽しみって大きいと思うんです。だから、その土地固有の自然を楽しめる外をつくるっていうことは、建築と同じくらい力を入れてやっていますね。

————どんなお客様にきていただきたいと思っていますか?
元々は、住宅総合展示場に行って、違和感を持って帰ってきたという人が、いろいろ探してうちを見つけてくれるみたいなことが多かったんです。
でも今は、家つくり専門メディアも、地域工務店の仕事を評価してくれるようなったので、工務店で建てることを前提に、検討される方も多くなりました。
国産材、県産材を使う意義を日々、仲間と伝播しているからか、そうしたことに賛成の皆さんに、心を寄せていただくことが増えてきたのは、嬉しい限りです。
大塚工務店の理念は「ひとの居場所をつくる」ことです。
僕たちの仕事は子ども達が育つ家を建てているわけで、それは未来をつくっているのと同じことだと思うんですよね。
だから、子ども達と一緒に、お父さんお母さんも、住み暮らす土地の気候風土が好きになって、郷土愛を醸成することができたら、これ以上の歓びはありません。
長く愛着を持って暮らすことができれば、つくり手に頼らずとも、維持管理しながら、百年住み継ぐ家になるという考えもシェアしています。

それから、家つくりの過程で大切にするのは、節目を祝うことです。例えば、地鎮祭でのエピソードをひとつご紹介させてください。
以前、いつもと違う神社さんにお願いした時、神主さんが施主さんに話してくれたことがあります。
「工場生産の建材が届いて組立てるだけの家が多い昨今、大塚さんがつくる木の家は、手仕事が沢山あるとお見受けします。職人さんの想い、気持ちが込もった家になりますね。愛情いっぱいの木の家に住めることは幸せです。」
そんなご挨拶の言葉をいただいて、大変に勇気づけられたことを、昨日のことのように覚えています。
————大塚工務店へのリクルートを考えている人へのメッセージをお願いします。
大工になりたい若者に是非訪ねてもらいたいです。
私たち地域工務店が用いる在来軸組構法は、歴史あるオープン工法です。つまり、限られた企業だけがお金儲けをする為の専売やフランチャイズではありません。
その環境で、着実に潰しの効く技量を身につけることができれば、いくらでも仕事はあると思っています。職人不足が加速する中、これから引くて数多になり得る大工技術です。手に職を付けるに申し分ありません。
また、そんな大工さんと一緒に、ものつくりを愉しみたいという皆さんにも合力してもらえれば嬉しいです。
子ども達の原風景になるような場所つくりは、頑張れば頑張るほど、社会や人の役に立つ仕事です。誇りを持って挑んで欲しいと思います。

大手のマニュアル化された仕事だと、自らの体験をすぐ仕事に活かしていくことは難しいでしょう。
でも本来、ものつくりである建築の仕事は、今までの人生経験、生活する中で見るもの聞くもの全て、すぐにダイレクトに、活かせる職場のはずなんです。それが叶う、風通しの良い環境つくりも心がけています。
大塚工務店が理想としている仕事の原理は、家を建てることが、利他的でもあること。つくることで、その場所や周囲が、前よりも良くなること。そんなありようが繋がり、拡がり、故郷が少しずつ豊かになることです。
たとえば角地に家を建てる時、塀を囲い込み町と断絶するよりも、その角を開放して樹を植えて豊かな町角をつくる。季節ごとに、開花や新緑の話に花が咲く。
その方が素敵だと思いませんか。
こんな風に「まちに開かれたものつくり」に共感できる皆さんに、ぜひ仲間になってもらいたいと考えています。
最後に、大塚工務店の木の家のつくり方を伝授します。それは、「明日、美しくあるようにつくる」ことです。 大工という職能は、新築だけでなく、リフォームやリノベーションを通じて、先人達の想いも受け継ぎながら、過去と未来を行き来する仕事です。 目の前の仕事が、未来のみんなから見ても、恥ずかしくないようにできているか。大工さん達には、そんな時間軸の付いた物差しを携えることで、常に前を向いて仕事をして欲しいと願っています。
DATA
| 会社名 | (株)大塚工務店 |
|---|---|
| 所在地 | 〒673-0885 兵庫県明石市桜町2-22 |
| 電話番号 | 078-911-8537 |
| 代表者 | 大塚伸二郎 |
| WEB | https://kinoie.life/ |
| SNS |