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代表・築出 亮インタビュー
(株)ツキデ工務店

——ツキデ工務店のことと築出社長のこれまでについて教えてください。

ツキデ工務店は私の父が1979年に創業した会社です。
2018年に私が2代目として引き継がせていただきました。

今は僕もこの道で生きていく覚悟が出来てやってますが、若い頃は父を中心に会社が回っていて、継いだ方がきっといいいんだろうなと思いつつ、自分が父のようになっている姿が全然イメージできなかったんですよね。

それで高校卒業して大工になろうとしたんですけど1年くらいで挫折して、しばらくは建築と関係ない仕事をしてました。その後22歳くらいでまた会社に戻ってきました。
今46歳なのでそれから24年間は辞めずにこうしてやっていますね(笑)

なんとか続けられているのは色んな先輩達や仲間達との出会いがあって、工務店の2代目、3代目みたいな自分と同じ境遇の人たちと知り合ううちに孤独に感じなくなったことも大きいと思います。

——若い頃は工務店の2代目としての葛藤がありましたか。

そうですね。色々と悩みながらやってきたというのが正直なところです。
22歳で会社に帰ってきて、10年間くらい現場監督をしたんですが、最後の2年くらいはメンテナンスの仕事が多かったんです。

その頃は現場の仕事も少し持ちつつ、メンテナンスを数多くやっていました。
その時の仕事が自分には楽しかったんですよね。

現場監督でやっていた時は、図面を自分で描いてないので自分で判断できることって、図面の部分に関しては少ないじゃないですか。
現場監督なりに「こうした方がええのに」とかそういうのはあるわけです。でもそういう提案の部分については中心人物ではないので。
それで自分の考えで勝手にやっちゃって怒られたりして(笑)。

それがメンテナンスだと、お客さんと直接話をして、納まりを考えて、見積を出して現場監督もやって最後に請求書を出すっていう一連の流れが経験できました。

それで仕事がすごく楽しくなってきて、楽しくやっているとそれを見たお客さんから紹介をいただけたり、隣の家の人から声をかけていただいたりとかそういうことが増えてきて、ますます楽しくなるっていういい流れができました。

(株)ツキデ工務店
宇治の二世帯住宅

その時期にちょっと悔しいことがあって、メンテナンスの仕事がきっかけで6000万円くらいの改修工事の紹介をいただいたんです。

その仕事を設計も現場監督も別の人がやることになっちゃって、自分は橋渡しをしただけで関われへんっていうことになってしまって。

それまではメンテナンスでいただいた紹介は自分がやっていたんですけど、大きい仕事はまだ自分には任せてもらえないっていうのがすごく悔しかったです。

ちょうど同じ頃に、先日亡くなられてしまった秋山東一先生の「秋山設計道場」に誘われて設計を学ぶようになったんです。

僕はそれまできちんと設計を学んだことはなかったのでゼロからのスタートだったんですけど、自分のそれまでのモヤモヤしていた部分、ダイレクトにお客さんに関わりたいっていうそのど真ん中にくる仕事が「基本設計」なので、それを学ぶのは面白かったですね。

それでどんどん設計にはまって「基本設計」に打ち込んでいきました。

今考えると、設計を学ぶ前のメンテナンスが面白くなってきた頃の僕はただの自己満足だったんですよね。
でもやっぱりそこにはイチから家づくりにちゃんと関わりたいっていう想いがあったんやと思います。

工務店は経営のことも大事ですけど、まずはどれだけいい家がつくれるか、それが一番の面白さであって、秋山先生からボロカスに言われながら(笑)頑張ったことでその面白さに目覚めたという感じですね。

——メンテナンスの経験から設計道場といい順番でしたね。

そうですね。そう思います。
その頃そうやって勉強して初めて自分で設計がしたのが自宅の新築でした。

(株)ツキデ工務店
初めて設計した自宅「梅美台の家」は今もモデルハウスとして活躍している

でも自宅ができたのが2010年で、その後に自分の設計したお客さんの家ができたのが2013年だからそれまではやっぱり会長が全部プランしてたんですよね。

その間、僕がいいなと思う家もあったけど、僕やったらもっと違う設計をするというのも結構あったんですよ。

自宅をモデルハウスとしてお客さんの案内に使うようになって、やっぱり実際に生活している家を見てもらうっていうのが説得力があったみたいで、見学後に仕事をいただくことも結構多かったので、それが自分の自信になっていたのもあると思います。

それで2013年完成の「家族と愛車が暮らす家」は、土地から僕がお手伝いしてた物件で、この家は絶対に自分がプランしたいというのがあって、もう何度も何度も会長にプランを出して、最後に会長が根負けして(笑)僕のプランでやらせてもらったんです。

ツキデ工務店 施工例「家族と愛車が暮らす家」
築出社長が初めてプランしたお客様の家「家族と愛車が暮らす家」(宇治市/2013年完成)

それからお客さんの家のプランをやるようになりましたが、一生に一度の家づくりにそうやって関わるっていうのはすごく重たい仕事だな、責任重大だなっていうことにも気づきましたね。

この仕事は割に合わない仕事だなとも思います。好きじゃないと絶対できないです。儲からへんのに、リスクはでかいっていう。

失敗が許されないし、一度関わりを持ったお客さんの家はずっと守り続けないといけない、すごく長い付き合いになるっていう、それが重たいところだし、めちゃくちゃ面白いところでもあります。
だからすごく大変なんだけど、なんで皆んな工務店やらへんの?とも思ってますね(笑)

——ツキデさんは家づくりで何を大切にされていますか。

うちのお客さんは家具にめちゃくちゃこだわっている人とか一癖も二癖もある人が多いですが、芯の部分で皆さん素敵な方ばっかりで、そういうお客さんと仲良くなれば仲良くなるほどいい家ができるっていうのがあるんですよね。

親密になればなるほどどういう家にしたらいいのかっていうのがわかってくるっていう。

だからもう今はやめているんですけど、最初の頃は毎回お客さんと友達になってましたね。一緒にご飯にいったりとか、毎年一緒に旅行に行ったりとか。

それをお客さん全員とやるわけにはいかないと気づいて今はもうやってませんけど、でもやっぱりある程度仲良くなって相手を知らないといいものができないっていうのはあります。

プロとしてお金をいただいてやっていることなので、これくらいでいいかっていう妥協があると絶対引っかかるんです。だから途中で諦めないで納得がいくまで最後までちゃんと話を聞いてからやるっていう、それは何をやるのかっていうと「その家族の幸せをきちんと考える」っていうことなんですよね。
これは秋山先生に教わったことでもありますけど、いかに親身になって本気で考えるかっていうのが大事やと思います。

(株)ツキデ工務店
豊かな自然を感じる小さな家

それともう一つは僕らは京都のこの土地でやっていることを大事にしたいっていうのがありますね。
まずは地元の吉野林業という会社がすごすぎるっていうのがあります。

日本の林業が始まったのが、諸説あるんですけど安土桃山時代あたりではないかと言われているんですけど、それまでは天然杉、天然ヒノキが使われていて、そうした天然物はすごく木が密生している過酷な環境で育っているから、目が細かく詰まって最高の品質なんです。

吉野林業にはそんな天然物の品質の木を目指した昔の林業がそのまま残っているんです。

最初に苗木を普通の林業の倍以上の本数で密植して、その後の間伐を何度も何度も、最後に20mくらいの間隔になるまで300年かけて繰り返していくんです。

これが普通の林業だと畳1畳に1本くらいの間隔で植えて60年から100年くらいかけて育ててっていうやり方なのでそれと比べると相当手間がかかります。

あと、山には山主と山守がいて普通は山主の判断で木を切るんですけど、吉野林業は山守の方が権限を持っている体制になっているからすごく管理がしっかりしていて山が荒れないんですよね。

ツキデ工務店 原木市場の様子
吉野林業・原木市場の様子

実際、吉野林業の木は目がすごく詰まっていて、天然乾燥なのでほんのりピンク色の最高レベルの木やと思います。

昔はなかなか僕らみたいな工務店が使えるものではなかったんですが、先代の世代が少しずつ一般住宅の材料として取引させてもらえるように働きかけてくれたお陰で使わせてもらえるようになりました。

木は根元に近い部分が一番いい大トロみたいな部分なんですけど、僕らが使わせてもらっているのは2番玉、3番玉っていうその上の部分で、120〜130年ものですが値段もそんなに高くないです。

今の普通の家づくりで使われている木はほぼ人工乾燥材で、人工乾燥材がダメだっていうわけではないんですけど、こうやって昔からの林業を守ってやっている人たちが近くにいるからにはこのやり方を絶対に後世に残していきたいっていう思いが強いですね。

同じように職人さん達・・大工をはじめ左官職人さんだったりタイル職人さんだったり、凄い腕を持っている人達がたくさんいるので、その人達の技を残していけるような環境づくりが大切やと思っています。

お寺や町家や古民家も、補修が必要な時に、そういう建物を直すには技術が要りますよね。それが無くなってしまうのは悲しいことだと思います。

「木・竹・土・わら」の材料でつくられる「荒壁の家」
「木・竹・土・わら」の材料でつくられる「荒壁」を施工する左官職人。荒壁は「外断熱」と組み合わせることにより快適な温熱環境を実現できる

こういう職人さん達は世界一の技術を持っている人達なので、そうした技術を家づくりにバランスよく取り入れて、適正価格をちゃんとお支払いして、ずっとお願いしていける環境を作りたいと思います。

なんで手刻みなのって聞かれたりしますけど、プレカットが悪いというわけではなくて、やっぱりツキデ工務店をそうした腕のいい職人さん達が集う場所として残していきたいという想いからですね。

あとは同じような考えからきていますけど、昔の建築を知ることを大事にしていますね。

やっぱり人間、仕事のピークってあると思うんです。歳を重ねていくと、どこかで「これがいい」っていう仕事をしていたのが、「これでいい」になっちゃうというか。

うちの会長を見ていてもそんな風に感じることがあったんですけど、でもそれでもいい仕事ができていたのは、昔の建築の型をよく知っているからだなと思うことが多くて、例えば茶室でここに「長押(なげし)」がきたらここに「落とし掛け」がくるとか、そういう作法を知っていることで完成物の水準を保てるっていうのがあると思います。

(株)ツキデ工務店
築73年の古民家再生「宇治白川の家」

伊勢神宮なんかも20年に一回建て替えるのはそういう技術を伝えていくためですよね。職人が見習いの時、一人前になってから、歳をとってからと3回経験できるじゃないですか。

吉村順三の「吉村障子」もお寺の障子にヒントを得たものだし、アントニン・レーモンドが丸太を使うのも、全部元は昔の日本の木造建築からきているわけだから、やっぱりそういう昔の建築の作法から学ぶことは大きいと思いますね。

秋山先生の設計法にしても、別にイチから考えなくていい、もう出来上がっているものがあるからその組み合わせを考えればいいという考え方なので、これも共通するところがあって、やっぱり日本の昔の建築の考え方からきているなと思います。

——ツキデさんの家づくりの売りはどんなところですか

伝統的な技術を持った職人さんだけがいても、やっぱり限られた時間の中で仕事をしてもらうわけだから、木の納め方とか開口部の納め方、家具の納め方みたいな部分って、絶対に設計と現場監督の力が必要なんですよね。

それが無いと、同じ図面で同じ材料を使っているのに、なんか違うなってなっちゃうんです。
その監理力・監督力みたいなところがツキデは強いと思います。

込栓(こみせん/木と木を組み合わせた部分を、木のくさびや棒で固定するための部材)の面の取り方とかね、結構雑にしがちなんですよ。
でも、それはちゃんと考えてやった方がいいし、柱の面もね、柱の大きさによって面変えた方がいいしとか。

そういうのをちゃんと考えてやってるなっていうのを、いかに言葉じゃなくて建物自体で伝えるかみたいなのは大切にしている部分ですね。

やっぱり関西の人は直接言葉にはしなくても、そういうのがDNAに根付いていますから、お客さんにもそこは感じていただけている気がしますね。

(株)ツキデ工務店
光雲寺「看月亭」再生工事

——改めて、どういうお客様に来ていただきたいと思ってらっしゃいますか?

やっぱり日本の文化を大切に考えている人ですかね。
というのは、うちの家は100年以上持ってしまうので、なるべく血縁関係で継いでいって欲しいじゃないですか。
40年経ったら潰して建て替えようっていうのじゃなくて、三世代、四世代、五世代と家を引き継いで欲しい。
そういう考えを持っている人っていう意味で言っています。

昔は木はすごい貴重なものだったので大切にっていう考えでしたけど、今はそうじゃなくなっていますよね。
でも僕らの仕事って、規模が小さくて材料が細いっていうだけで基本的には社寺をつくるのと変わらない仕事をしていると思っています。
そういう建物だから、やっぱり何世代にもわたって住み継いでいくっていう考え方を大切にして欲しいと思います。

そんな考えでやっているからか、うちはリフォーム・リノベーションが多いんですよね。数は新築よりずっと多いです。
そうやって手を入れて住み継いでいくことこそ大事にしていきたいし、実家を改修して二世帯にしてくださいとか言われると本当に嬉しいし気持ちを込めてやれますね。

築25年のリノベーション「 受け継がれる2世代の家」
築25年の家をリノベーションした2世帯住宅「受け継がれる2世代の家」

あとは設計の話をさっきいかにも自分が設計してっていう風に話しちゃいましたけど、工務店の設計のいいところってお客さんとの距離が近いところだと思うんです。

だから建築家の先生に頼むとやっぱりその建築家さんのカラーがあるから、それを最大限に出して欲しいっていうのであんまり色々と言わない方がいいのかなとかあるかもしれないですけど、僕らの場合だとお客さんにはどんどん話してもらってヒントをなるべくたくさんいただいてこの人に必要なものは何なのかっていうのを引き出す、だから最終的にはお客さんと一緒に設計した家なんですよね。

僕らはできる限り良い理解者になろうとしていますので、そういう会社と家づくりをしたいっていう方に来ていただきたいです。

——ツキデ工務店で働いてみたいという人に伝えたいことはありますか?

スタッフの自由度を高くしたいというのがあって、大事なことはいちおう僕が確認はしますけど最終的にはなるべく本人が決めるという風にしています。

建築ってそもそも自由な世界なので、だから軍隊式みたいなのとは真逆で、子育てのように1人1人その人に合ったやり方で育っていけるように、得意分野を伸ばせるような環境がいいと思うんです。

あと、忘年会とか新年会みたいなのはやらないようにしていますね。社員旅行もないです。
そういうのって僕自身がそうなんですけど出たくないとかしんどいっていう人もいるし、だからやりたかったら企画してくれたらお金は出すよっていうくらいの感じにしています。

新入社員が入ってきた時にちょっと少人数でレストランに行って会社の説明とか話をするっていうはやってますけど、あとは歓迎会とか送別会とかもやらないようにしていますね。
その代わり健康診断とか人間ドックとかは手厚くしています。

それと給与の面でいうと、スタッフには無理しなくてもうちの家を建てられるくらいの収入、1000万円を目指して欲しいと思っています。

これは大工さんも同じで、1000万くらいなかったら弟子も雇えないし、過酷な仕事なので子どもも後を継ぎたいと思わないと思うので、そこを目指して欲しいなと思っています。

(株)ツキデ工務店

DATA

会社名 (株)ツキデ工務店
所在地 〒611-0021 京都府宇治市宇治野神94番地10
電話番号 0774-21-2611
代表者 築出 亮
WEB https://tukide.jp/
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